転職活動

キャリアアップ転職に成功するエンジニアの特徴と、成功のカギ。

「戦略を立てる」という前向きなテーマを取り上げているのに、ここまで多少後ろ向きな話をしてきてしまいました。

ここまでは、キャリアを考えるきっかけとして、「現状への不満」を中心にお話ししてきましたが、私が転職支援を通じて強く感じているのは、

「転職に成功する人は、現状への不満を言わない」という傾向があることです。

ここまで「不満」について語っておきながら、ハシゴを外すような言い方になってしまいましたね。

具体例:中堅のソフトハウスに勤務するHさん30歳の場合

Hさんは、これまでPOS関連のパッケージソフトの開発に携わってきました。

転職経験はありません。

上司にも恵まれ、開発作業も楽しく、毎日充実した日々を過ごしてきました。

Hさんには、知人を通じて会うことになったのですが、私の第一印象は「この人、とても楽しそうに仕事しているのになんで転職したいなんて言ってるんだろう?」でした。

よく話を聞いてみると、彼にはチャレンジしてみたいことがあるのだそうです。

「これまでは、ソフトウェアの開発を通じて流通や小売の仕組みを、ある意味ワンクッション置いた立場から見聞きしていたのですが、どうしても小売業の現場に飛び込んでみたい」

それが彼の希望だったのです。

もっと言うと、彼が希望している会社は1社だけでした。

アパレルの製造小売で目覚ましい成長を遂げていた会社です。

早速、彼をその会社に推薦したところ、1ヶ月も経たないうちに内定してしまいました。

紹介先の人事からも、「彼のようにやりたいことが明確で、しかも前向きな人は大歓迎です」と言う言葉を頂いたのが印象的です。

入社して3年以上が経過しましたが、Hさんは今も転職した会社で活躍しています。

転職成功のカギ① 現職へのネガティブ感情と、転職先への気持ちを切り離して考える

Hさんのような例は、ひょっとしたら少数派かもしれません。

でも、「コレがやりたい」と言うことが明確であり、そして前向きな思いがあると言うことは、相手に与える迫力が違うのだと言うことは強烈に印象に残っています。

先ほどもお話ししたように、キャリアを考えるきっかけは「現場の不満」だとしても構わないです。

ただ、その不満に引きずられて次のキャリアを考えるようではいけません。

Hさんのように、自分がしたいことを見つめて前に進むよう心がけると良い結果に結びつく可能性が高まります。

成功のカギ② 「次」ではなく「未来」をイメージして転職する

自分のキャリアを考えるとき、あるいは転職しようとしている時には、ほとんどの人は自分の「次の姿」をイメージしているようです。

もちろん、「最終的には起業したいです」とか「上場企業の部長ぐらいにはなりたいです」もしくは「ある領域のスペシャリストになって、お客様の役に立ちたいです」と言ったことはイメージしている人がたくさんいます。

そうしたイメージを持っていることは、何もイメージしていない状態に比べればまだましです。

でも、例えばあなたの友人が「俺、最終的には起業したいんだよね」と言ってきたら、何か聴きたくなりませんか?

たとえば、「いつ頃起業するの?」とか「どんな業種で起業するの?」とか。

さらに踏み込んで、「結局年収はいくらぐらい欲しいと思って起業するの?」なんてことも聴きたくなりますよね。

友人がどんなことを考えて「起業したい」と言っているのか、知りたくなるはずです。

Cさんという27歳の男性がいるとします。

現在は、ブログ関連のシステム開発をしているSEです。

彼は、自分が40歳になった時に起業しようと考えています。

ざっと13年後です。その時の企業のネタとして、新しい切り口のSNSサービスへの参入を考えているそうです。

果たして、その頃にSNSサービスに新規参入することが現実的でしょうか?

実際には、「その時になってみないとわからない」のだと思うのですが、おそらく非常に難しいことでしょう。

現代では、特にテクノロジーの進化とそれに伴うビジネス環境の変化のスピードが激しいため、紺ソ秋の自分のキャリアを考えるにあたって、あまりにも具体的に「何をするか」を決めることは不可能、あるいは意味のないことになりかねないのです。

ですから、10年先、20年先のキャリアを考えるにあたり、あまり具体的に仕事内容をイメージする必要はありません。

少し話が逸れますが、これを別の観点から言うと、「ある特定の技術やビジネスモデルにこだわりすぎる」と言うことは、長い目で見た場合には少なからぬリスクを孕むことになりますので注意が必要です。

自分の子先の仕事内容を詳細にイメージしなくて良いからといって、何も考えなくていいわけではありません。

先のことを見通す場合には、むしろワークスタイルやライフスタイルをイメージすることに意味があると私は考えています。

例えば、次の質問について考えてみてください。

  • 40歳で年収はいくらぐらい欲しいですか?50歳では?
  • 何歳ぐらいまで現場エンジニアとしての仕事をしていると思いますか?
  • 何歳ぐらいでマネジメント職に就きたいですか?
  • そもそもマネジメント職に就きたいですか?
  • マネジメント職に就かないとしたら、何をしていますか?スペシャリストですか?
  • スペシャリストになるとしたら、どんな領域のスペシャリストですか?
  • 40歳のとき、正社員という働き方を続けていますか?それともフリーになっていますか?起業していますか?

他にも、あなたの未来をイメージするポイントがあるかもしれません。

どこに住んでいるかとか、仕事以外にどんなライフワークを持ちたいかなど、そういったこともこの先を考える上で意外と重要な問いかけです。

大切なのは、今の気分に流されるのではなく、ある程度先の時点におけるあなたのセルフイメージを念頭に置きながら、次の一歩をいかに踏み出すかを決めることです。

目先の転職先にあれこれ悩んでいるだけでは、道に迷った挙句差し掛かった十字路でどちらに進むかをなんとなく決めてしまうことと同じです。

「最終的にどこに到達したいのか?」を思いえがかなければ、あなたのキャリアがどこに辿り着くのかわからなくなりますよね。

成功のカギ③ 転職先に求める条件の「優先順位」を決めておく

転職するときには、できれば今よりもやりがいのある仕事で、専門性も身につき、仲間にも恵まれ、そして年収もアップするような会社を選びたいものです。

自分の希望を全て叶えるような転職先があれば、それはそれで何も不満はありません。

とはいえ、現実はなかなか理想通りにはいかないものです。

「年収は希望通りなのに、ポジションが下がる」

「希望の業務内容なのに、年収がやや下がる」

といった条件提示を受けることは、よくあることです。

自分の希望に全て合致するような企業に出会うまで、辛抱強く転職活動を続けるのも一つの方法です。

日本国内だけでも200万以上の企業があるわけですから。

いずれ「これだ!」という企業に巡り会えるかも知れません。

とはいえ、あまりお勧めはしませんが・・・。

一方、転職活動を進めていくうちに、自分が何を望んでいたのかわからなくなって、結局本来の希望とはかけ離れた企業を選んでしまうことが心配です。

例えば、このようなケースも考えられます。

転職活動をしているあなたは、2社から内定を得ました。

もともとERP導入のSEとして活躍していたあなたは、その経験を生かしてユーザー企業のシステム部門を希望していました。

しかも、できれば大企業に入りたいと望んでいたとします。

内定を出してくれた1社は、甘さにあなたの望む規模の大きいユーザー企業。

もう一社は中堅のSIerです。

このSIerでは、現在のあなたの仕事とほぼ同じ立場、同じ仕事をすることが期待されています。

迷う余地はないはずなのに、ここに少々問題が生じています。

ユーザー企業の方は、あなたの現状の年収より50万円ダウンの提示をしてきたのです。

一方のSIerはというと、なんと100万円アップの提示です。

あなたならどちらを選びますか?

もう一つ例を挙げます。

あなたは、SIerに勤務するメインフレーム系のSEだとします。

望んでその仕事についたわけではないのですが、その仕事を10年近く続けています。

同期の友人たちが、WEB系のシステムやERP導入で日々新しいテクノロジーに触れているのを横目で見ていると、羨ましくなると同時に、将来に対する不安が湧いてきました。

「自分はこのままメインフレームのエンジニアを続けていると、将来職にあぶれることになるのではないか」

そんなことを思う日々が続き、ついに転職を決意しました。

ところが、思った以上に転職活動は難航し、これまでのところ10社に応募し書類選考通過が3社。

無事に書類選考が通過した3社も、残念ながら一次面接で不採用となってしまいました。

失意の中で知り合いの人材紹介会社を尋ねたところ、ある企業を紹介されました。

名のある銀行で、社内システムのエンジニアを探しているとのことです。

促されるままに応募してみると、あっという間に内定が出ました。

「やっと自分を認めてくれる会社に出会えた」とあなたは素直に喜びました。

ところが、そこで期待されているのはメインフレームシステムの開発と保守を担当することでした。

あなたはこの銀行に転職しますか?

どちらの例も、転職支援を通じて私がよく目にしてきた事例です。

いずれの例についても、最終的には本人が決めれば良いことです。

ただ、例えば高い年収を提示された時、あるいは憧れの企業から内定を得た時、そして転職活動に疲れた時には、本来の自分の優先順位を見失うことがあるものです。

その時点で優先順位が変化したのであれば、全く問題ありません。

ただ、現実のオファーを目にして、自分が決めた優先順位に一瞬目をつぶっているのだとしたらどうでしょうか?

一瞬つぶった目は、また開くときがきます。

その時に後悔しないという自信がなければ、やはりよく考えてみる必要があります。

「転職活動でどうしても実現したいこと」あるいは、「どうしても手に入れたいこと」は、どんな状況でも常に見失わないようにすることが、転職成功のためにはとても大事なことです。