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SIerに入社するならプライムベンダーを選ぶべき3つの理由

田牧
田牧
技術職・エンジニア専門のキャリアアドバイザーや採用支援を務めています。運営の田牧です。

「SIerで働くならば、上流工程を選んだ方がいい」

「そしてプライムベンダーを選べ」

SIer経験者からは、よくこのように言われます。

これはIT業界特有の理由が存在するからで、企業選定を誤ると収入・キャリアに加え、私生活まで台無しになってしまう可能性があります。

  • そもそもプライムベンダーとは?
  • SIerに転職するならプライムベンダーを選ぶべき理由とは?

そんなことを一つずつご説明していきますね。

そもそもプライムベンダーとは?

IT業界・システム開発の世界では、「一次請けの企業」のことを「プライムベンダー」と呼んでいます。

プライムベンダー(一次請け)になることが多い有名大手企業の例

  • NTTデータ
  • 日本IBM
  • 日立製作所
  • 富士通

「プライムベンダー」はユーザーである顧客企業から仕事を直接受注する立場です。

このプライムベンダーから更に二次請け、三次請けの企業へと細かく仕事が切り分けられて流れていく構図が一般的です。

このシステム開発における下請け構造は、建設業界ともよく似ています。

売り上げに当たる受注金額の面から見ると、「プライムベンダー」と「二次請け以降の企業」とで受注金額が大きいのはプライムベンダーの方です。

ということはつまり、プライムベンダーを任される企業は利益率が高く、儲かっていると考えてほぼ間違いないということです。

プライムベンダーと二次請けでは、仕事内容が異なる

プライムベンダーと二次請け以降の企業とでは、そこで働くエンジニアの仕事内容も異なります。

プライム(一次請け)は顧客企業から直接仕事を受注しているので、折衝を行う立場にもなります。

なので、仕事の内容はマネジメント色が濃く、プロジェクトやシステムの全体観を捉える立場での業務比率が高くなります。

一方で、二次請け以降の企業では手を動かし作業をする立場に近くなり、機能ごとの詳細設計や実装(コーディング)と言った業務が中心になります。

こういった上流工程の仕事ばかりを担うということは、詰まるところプライムベンダーは”儲け”に加え、”一番美味しい仕事”も両獲りしているという風に言えるのです。

 

マネジメント(PM)経験があるエンジニアは、市場で重宝される

田牧
田牧
なぜプライムでの仕事が一番美味しい仕事なのでしょうか?

結論を言えば、プライムベンダの仕事は「需要があり」「給料が高い」仕事であるということです。

現実的には、現場で開発をしているエンジニアの方々こそが、実践的なプログラム開発やシステム設計の力を持っていることになります。

ですので、「自分で手を動かしてプログラムを作ることが好きだ」という方には、設計や実装が中心の環境で仕事をするのも悪くはありません。

ただ、このSier業全体の下請けピラミッドの中に組み込まれている限り、下克上を果たすのは至難の技なのです。

建設現場で実際に汗を流している職人さんが”建物の設計”をしたり、そもそもどんなビルを建てるかという”デザイン”に口を出すというシーンを思い浮かべにくいことと同じです。

(もちろん、建設業の場合は資格の有無も影響していますが)

二次請け以降の企業では必然的にプライムベンダーの描いたスケジュール・計画の中で作業をすることになりますから、「つべこべ言わずやれ」の世界になりがちなのです。

ですから、単に損得で言うならば、プライムベンダーを目指すのが得策だと考えています。

SIerを選ぶならば、プライムベンダーを選んだ方が良い理由。

「SIerを選ぶならプライムベンダー」とお伝えしているのは、あくまで「損得」を考えた場合のお勧めをしています。

「自分は現場で燃え尽きるまでガッツリ働きたい!」
「とにかく新しい技術を習得して、現場で試したい!」
「ガリガリ黙々とコーディングしていたい!」

「現場目線で技術重視な希望を持っている人」には、プライムベンダーがいいよと言われてもピンとこないことは理解しています。

ですが!それでもプライムベンダーを選んで欲しい理由があります。

プライムベンダーを選んで欲しい3つの理由
  1. プライムベンダーだからこそ身につく重要なスキルがある。
  2. 給与水準が高い
  3. 専門性も高められる

仕事内容の好き嫌いは大事ですが、長期目線に立つとこの3つのポイントが存在することは頭の片隅に置いてもらえると幸いです。

理由① プライムベンダーだからこそ身につく重要なスキルがある

プライムベンダーという立場であれば、皆さんの今後にとって重要なスキルが身に付きます。

プライムだからこそ身に付く重要スキル

「どんなシステムを作るべきか?」という設計作業の上流に参画でき、要件定義のスキルを身につけることができる。

プライムでシステム開発の上流から関われるというのは貴重な機会であり、間違いなく上流での経験が、あなたの市場価値を高めてくれます。

市場価値としてSEに求められるのは、「現場での開発能力」や「最先端の技術知識」だけではないのです。

むしろこの「要件定義のスキル・経験」こそが重要です。

少なくとも日本では要件定義経験の有無で、入社できる企業や案件の幅が遥かに異なります。

仮に今後の皆さんが「スタートアップに転向する」ようなことがあるとすると、きっと転職先のスタートアップでも要件定義や全体を俯瞰するマネジメント経験があるかないかで採用可否が決まったりします。

田牧
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クライアント企業と直接やり取りするのもプライムベンダーにいるエンジニアのみが担える役目です。

クライアントと直接コミュニケーションを図ることで、あなた自身の業務上でのコミュニケーションスキルを高めることができるというおまけもついてきます。

理由② 給与水準が圧倒的に高い

プライムベンダーは二次以降の下請けと比較して、明らかに給与水準が高めです。

これはプライムベンダーだからという理由だけでなく、大規模案件を受注できるのは一定の資本体力や実績がある大手企業であることが理由でもあります。

有名プライムベンダー企業の年収例
  • NTTデータ 20歳代で480〜530万円、30歳代で740〜790万円ほど
  • 日本IBM 20歳代で600〜700万円、30歳代で800〜1100万円ほど
  • 日立製作所 20歳代で600万円前後、30歳代で700〜800万円ほど
  • 富士通 20歳代で500〜600万円、30歳代で730〜780万円ほど

やはりこうやって見ても高給取りだと感じます。

二次請け企業の中にもプライム大手と同等の給与待遇を用意している企業もあります。

しかし、プライムベンダーを張れる企業には年収だけでなく投資余力もあるはずです。

極端な例ですが、日立製作所を例に挙げてみましょう。

日立は2020年7月に、スイスの大手企業ABBから世界トップシェアの送配電事業を1兆円で買収しています。(日立ABBパワーグリッドとして子会社化)

この日立による超大型買収は、自社で絶好調のIoT基盤サービスと送配電機器システムを組み合わせ、電力消費量予測や故障予知・保守までを、各国の電力会社へ売り込むという壮大な狙いをもっての投資です。

こういった先を見据えた投資は、投資余力のある大手プライムベンダーにしかできない行動でしょう。

もっと現実的に給与以外のメリットを挙げるなら、教育制度や福利厚生への投資が盛んで充実していることも期待できますね。

理由③ 専門性を高められる

大手に限らず、中小規模のプライムベンダーにも大きなメリットがあります。

と言うのも、プライムベンダーの中には中小規模の企業でありながら、特定のテクロジーや業務領域に高い経験値を持つ」企業が存在します。

このような豊富な専門スキルがウリでプライムを張っている企業を探せば、「プライムベンダーの良さ」と「現場目線でのスキルアップ」を両方とも獲得できます。

つまり、あなた自身のエンジニアとしての専門性もちゃんと高められ、開発力が大してないのに偉そうなPMになってしまうことも避けられると言うことです。

プライムベンダーへの転職で知っておきたい「穴場企業」の存在

「プライムベンダーといえば、いわゆる大手企業。私の経歴なんかではそうした企業には入れませんよ」

そんな自信がないという声も聞こえてきそうです。

「プライムベンダーを選ぶべき3つの理由」でも説明した通り、プライムを張れる企業には大手が多いです。

ですので、プライムベンダーは大手企業→ だから内定獲得は難関という図式は正しいと思います。

システム規模が数十億円と見積もられるような、いわゆる大企業向けの基幹系システムの開発では、大手電機メーカー系などのSIerがプライムベンダーになるのは確実でしょう。(銀行、社会インフラなど)

ですが、実は中小規模でもプライムを多く担うような企業も結構あるんです。

IT業界をよく見てみると、大手企業でなくてもプライムベンダーとして活躍している優良企業はあるものです。

中小規模かつ優良なプライムベンダーが転職では狙い目

一つの例として、社員30名程度にもかかわらず、インターネット通販の最大手のシステム開発を直接受注しているSIerがあります。

つまり、「中小規模なのにプライムを務めている」ということですね。

彼らの強みとして、WEB系のテクノロジーに精通していること、同時に多くのユーザーがアクセスするようなシステムの基板設計の経験が非常に豊富なことが挙げられます。

「テクノロジーの先進性」という強みをクライアント企業が認めているからこそ、企業規模は小さくてもプライムベンダーとして仕事を独占的に任せているのです。

他にも、クラウドやAIなどの業務領域に対する専門性の高い技術力を持ったSIerも、規模の大小に関係なくプライムベンダーとなっています。

IT技術はAIや通信技術の発達によって、技術の幅がかつてないほど広がっています。

一点に特化した専門性を持つことで直接受注すると言うスタートアップ企業や中小SIer企業が、どんどん増えているんですね。

SIerだけでなく、Web系スタートアップにも非常に多くなってきています。

そのような中小規模の優良プライムベンダーが存在している一方で、社員1000人以上の大企業でありながら強みを打ち出せず、美味しさのない二次請け以降の仕事ばかりを手掛ける企業もあるのです。

数十人規模の中小プライムベンダーやスタートアップを選ぶべきか、はたまた数千人という大規模な二次請け企業を選ぶべきか。

どちらを選ぶかは皆さんの価値観次第ですが、技術の進歩は止まらないわけですから保守的になりすぎるのは危険と言えます。

田牧
田牧
私なら企業の規模に対する誘惑を捨てて、小規模でもプライムを取れる企業に行きます。

「鶏口となるも牛後となる勿れ」ということわざがありますが、まさにその通りです。

どんなに小さな企業や予算の少ない開発プロジェクトでも、プライムを張れるというのは大きな自信につながります。

一次請けの担当者としてのプロジェクトマネジメント、顧客折衝、要件定義と言った仕事の経験は、給与算定や転職のタイミングで皆さんのキャリアを際立たせることになるでしょう。

プライムベンダーに転職する上手な方法とは?

田牧
田牧
転職活動において、自分一人でハローワークや求人票を調べ、一人で比較して探すのは無謀な作業です。

特に転職が初めて〜2回目までの場合、なるべく効率よく、失敗のない転職活動を進めるためにも「転職エージェント」の活用をお薦めします。

あなたのエンジニアとしての経験年数、携わっていた工程・技術スキル、どんなチーム体制の中でどんなポジションで仕事をしていたのか?などなど、

募集をかけている企業側としても

「これはマスト条件として経験していて欲しい」

「これは出来ればレベルでOK。もしくは不要」

と言った採用フィルターがいくつも設けられています。

ですが、こういった細かい条件は求職者が見れる「求人票」にはほぼ掲載されていません。

面接になっても、面接官の口からはいちいち明らかにされないでしょう。

せっかく時間をかけて書いた履歴書を、見込みのない企業に送って落とされることほど、面倒で悔しいことはないです。

(新卒の就活を思い出してください。履歴書、何枚も書いて送ったのにお祈りされたのではありませんか?)

「転職エージェント」はこう言う各企業の細かい求人情報を把握しており、

見込みのある企業」「自分とマッチしている企業」を候補として挙げてくれると言う役割をしています。

私自身、40歳までに3度の転職をしていますが、初めの2回は転職エージェントに相談して決めました。

プライムベンダーへの転職に有利な転職エージェント

プライムベンダーへの転職を目標とするITエンジニアの皆さんは、

「マイナビITエージェント」

「レバテックキャリア」

「メイテックネクストIT」

上記の3サービスに登録すると良いでしょう。

まず第一に登録すべきエージェントはマイナビITエージェントです。

マイナビITエージェントは、ITエンジニア実務経験者であれば、業務系・Web系・ITインフラと言った分野や工程を問わず、幅広く対応できる優秀なエージェントです。

IT分野の皆さんは、まず第一選択としてマイナビITエージェントは登録するということで問題ないでしょう。

 

次に紹介したいのがレバテックキャリアです。

レバテックキャリアについては、本気でステップアップや給与アップを叶えたい、中堅〜ベテラン層のエンジニアに勧めたいエージェントです。

レバテックキャリアは、年収UPやスキルUPを狙うエンジニア経験者にお勧めできます。

保有求人7000件以上のうち、その約8割が年収600万円超えのハイクラス求人となっています。

2019年6月~2020年5月で転職が決定したエンジニア経験者のうち、77%の方が年収UPを実現するなど、エンジニア経験者の転職支援に実績と強みを持つエージェントです。

一方で、エンジニアとしての実務経験がほぼ無い場合は、取り扱い求人の都合上を断られてしまう可能性が高いです。

 

最後に、メイテックネクストは次点という形で紹介します。

メイテックネクストは「メーカー企業ならば、ピカイチの情報量とサポート実績がある」という特徴的な強みがあります。

メーカーと聞くと、情シスや社内SEを思い浮かべがちですが、ちょっと違います。

ソフトウェアファーストのモノづくりへと時代が変わってきたことで、メーカー企業はSIerへの外注依存から脱却し、ソフト開発やインフラ整備を内製に切り替えようと本腰を入れているのです。

そのため、製品開発プロセスにAIやRPAを導入して効率化するとか、製品と連携するスマホアプリやプラットフォームの開発をすると言った求人募集が激増しているのです。

田牧
田牧
かのトヨタ自動車も、「自動車会社から、モビリティサービス企業への変化を遂げる」なんて言ってますよね。

一手間を惜しまず登録して、電話・オンラインでの面談を一度は行っておきましょう。

エージェントによって、取引している企業や太いパイプがある企業が異なるため、お互い違った求人やキャリアの考え方を出してきて面白いと思います。

仮に転職しないとしても、皆さんがこれから働いていく上で有益な情報が得られることでしょう。

IT系専門エージェント①「マイナビIT AGENT

  1. IT・Web業界のエンジニアを専門とする転職エージェント
  2. 技術トレンドの変化を早期にキャッチしており、的確なキャリアアドバイスが得られる
  3. 「大手からスタートアップ」「SierからWeb」「派遣・SESから正社員」と言った、キャリアチェンジでのサポート実績が豊富

マイナビIT AGENTは求人企業の性質上、関東・関西・名古屋といった都市部での転職サポートを専門としています。

マイナビITエージェント
公式サイトで詳細を見る

IT系専門エージェント② 「レバテックキャリア

  1. ITエンジニア経験者の転職支援に特化した専門エージェント
  2. 保有求人7000件以上のうち8割以上が年収600万円以上のハイクラス求人
  3. 大手IT・WEB系企業からスタートアップまで幅広い転職支援実績が多数

※サービス対象エリアは、関東(東京・千葉・埼玉・神奈川)/関西(大阪・京都・兵庫・滋賀・奈良・和歌山)/九州(福岡)となります。

※現在、エンジニア未経験者向けの求人は取り扱いが無いためご注意を。

レバテックキャリア
公式サイトで詳しく見る

IT系専門エージェント③「メイテックネクスト(次点)

  1. 古くから全国のメーカー企業との付き合いが強固(親会社が製造系エンジニア派遣の最大手企業のため)
  2. 近年、製品のIoT化やDX推進によってIT業務を内製化するメーカーが増え、中途求人も増加
  3. 親身で丁寧な対応のアドバイザーが多く、あまり転職を急かさないスタンス