SEの皆さんの大きな1つの不満として、「すでに要件の固まったシステムしか開発できない」という声をよく耳にします。
本来SEになったきっかけが「自分の力で企業の変革や成長に貢献したい」という人々に多く見られる傾向です。
さらに最近よく聞くのが「うちのシステム開発案件の最上流には、コンサルティング会社がいるんです。彼らがシステム化計画を立てて、さらに最上流の設計を担当したようです。だから、私はどんなにこの会社で昇進しても、要件定義をさせてもらえるチャンスはなさそうです」と言った、SEの皆さんの諦めにも近い嘆きの声です。
皆さん、どこかで「決められたものを作る立場から、何を作るべきかを決める立場」に憧れをお持ちなのです。
そして、憧れを実現する1つの手段として、ITコンサルへの転職を考える人が増えているように実感しています。
本来、コンサルティングファームというのは、
「クライアント企業の経営や事業遂行上辿り着くべき”あるべき姿”を定義し、その姿と現状の姿を比較して課題をあぶり出し、これら課題に対する解決策を提示した上で、あるべき姿に至るまでのマイルストンを示す」という仕事を生業としています。
ただ、現代の企業社会においては、変革を進める大きなつ0ーるとしてITの活用が必須となっているので、結局ソリューションを提示すると、それに伴うシステム導入の話が自動的に出てくるわけです。
そうした流れを組むコンサルティングファームの代表例として、アクセンチュア、IBM、アビームコンサルティング、べリングポイントなどが挙げられます。
彼らは、業務系コンサルティングファーム、もしくはITコンサルティングファームと呼ばれ、ある程度システム導入を想定したコンサルティングサービスを手がけているのです。
一般的にコンサルティングファームに転職できる人というのは、
「別のコンサルティングファームでコンサルタントとして活躍していた人」や「事業会社の経営企画や事業統括的な部門に属していて、
会社全体あるいは部門全体をトップダウン的な視点で見てきた人」ということになっていますが、実はSEの皆さんにも大きなチャンスがあるのです。
しかもそれは、決して規模の大きいSIerに勤務する人達だけに門戸が開かれているのではありません。
システム開発の現場で、まさにシステムの設計・開発に携わっている人にも大いにチャンスがあるのです。
今でこそ、中国やインドといったオフショアを活用し、競争力ある価格帯で受注競争を繰り広げているITコンサルは、自社に入社した社員にシステム開発をさせることはほぼありません。
あるとしても、上流工程での概念設計やプロジェクト管理に限定されています。
ところが、かつて私が入社した頃のITコンサルティングファームでは、新人がプログラミングをするのは当たり前のことでした。
その当時、私は正直いって不満でした。
ITコンサルに入って、企業の皆さんと経営について丁々発止の議論をするものかと思っていたら、ある官公庁の財務会計プロジェクトに配属され、経営分析という名の統計情報を取りまとめるシステムを作ることになりました。
それこそ新人なので何のために必要なシステムなのかもわからないまま、日々とにかくプログラムを作り続けました。
「こんなはずじゃなかった」と本気で転職を考えたほどです。
ところが、今になって、上司や先輩が新人である私にシステム開発をさせていた理由が何となくわかるようになってきました。
コンサルの仕事というのは、とにかく事実(ファクト)と論理(ロジック)を突き詰めていく仕事です。
「たぶん、こうかも?」といった願望や勝手な思い込みの入り込む余地はないのです。
その点はシステムも同じですよね。
インプットがあって、プロセス(処理)があって、アウトプットがある。
しかも、それは私が書いた通りに忠実に動いてくれるわけです。
ということは、私がロジックを間違えていたり、事実と違うことを入力したら、確実に間違った答えが出てくるわけです。
そこには思いやりのかけらもありません。
「あいつは処理のところで年次レポートを出力するように記述しているけど、前後の文脈からすると、多分ホントは月次レポートを出したいんだろうな。じゃ、ここはヤツの思いを組んで月次レポートを出してあげますか」
なんていう忖度はしてくれません。
ファクトとロジックを学んでいくには、他にもたくさんの方法があるかもしれませんが、間違いなくシステム開発というのは最高の学び方の1つとなるわけです。
しかも、これは自分てやってみて初めて身につくものだと断言できます。
したがって、「SIerでプロジェクト管理してました」という人もコンサルティングファームでは歓迎されることと思いますが、同じように「中堅SIerで会計システムの設計や開発をバリバリやってました」という人も歓迎されるだろうと思うのです。
もちろん、全員が一律で高く評価されるわけではありません。
たとえ上流工程の仕事をしたことがなくても、
「システムの全体像を自分なりに調べ、自分が担当しているサブシステムが他の一連のサブシステムとどういった関係にあるのかを知っている」とか、
「システムの流れだけでなく、クライアントの業務プロセスにも精通した」というような事実が評価されます。
過去に私に相談をされてITコンサルに転職したHさんは、「現職のプロジェクトを離れる前に、そのプロジェクトと使われていたメインフレームのマニュアルを読破しました」と仰っていました。
ちなみに、全部で30冊ほどあったそうです。
それがコンサルティングに直接役立つわけではありませんが、その探究心が評価されたのでしょう。
仕様を渡されて仕様通りにシステム開発をしていただけでは、なかなか評価されることはありません。
ですが、「俺は小さいソフトハウスのSEだから、コンサルタントになんてなれないよ。」と決めつけているあなた。
そんなことは決してありません、是非チャレンジしてみてください。