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技術職・モノづくりエンジニアが航空機業界に転職する前に知っておきたいこと。(飛行機)

管理人
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元・派遣エンジニアで、現在は技術職・エンジニア向けのキャリアアドバイザーをしている管理人・田牧です。

日本の航空機関連メーカーは主に米・ボーイングに胴体や主翼、制御機器、内装品などを供給しています。

この記事では航空機業界への転職を考える技術職・エンジニアの方向けに、転職前に知っておいて欲しいことを書きました。

日本国内には本格的に航空機を製造するメーカーが存在しないため、表沙汰にあまり名前が出てくることはありません。

そもそも世界の民間航空機というのは米・ボーイング、欧州・エアバスの2社がビッグ2を形成しており、

世界で見てもメーカー数自体がそこまで多くないのです。

しかしながら、日本における航空機産業というのは「ボーイングの下請け」として非常に大きな産業を形成しています。

当記事内で改めて紹介しますが、日本の名だたる大メーカーが部品サプライヤ(パートナー企業)として名を連ねています。

このため、技術職・エンジニアの方が「航空機業界で働きたい」と考えた時、転職して航空機に携わることができるチャンスは十分にあり、期待が持てます。

航空機業界の最近の動向

最も大きなトピックスとして、日本においては国産航空機は長らく自前での機開発がありせんでしたが、三菱航空機が日本国産初のジェット旅客機「MRJ」の開発を進めています。

しかしながら開発はかなり難航しているのが実情であり、2017年1月時点で三菱航空機はMRJ初号機の納入を2020年半ばに先送りすると発表し、通算5度目の延期となっています。

このような中、三菱航空機のライバルであるブラジル・エンブラエル社も同サイズ機の開発を進めており、納入時期の差が縮まりつつあります。

これに対し、三菱航空機は技術職・エンジニアの中途採用をかなり積極的に実施しています。

その採用の中では通常の国内エンジニアの転職市場からだけでなく、海外から航空機開発に精通した外国人エンジニアを採用してくるほどです。

当面の目標は、航空当局からの形式証明の早期取得を目指す、というところです。

一方、日本勢が得意とする部品供給(胴体、主翼といったパーツ単位での納入)では、

ボーイングが「777」を減産しており、2020年に投入される大型期「777X」の生産が本格化する前の境目の時期に入っています。

航空機業界の主力企業

世界の航空機業界は「米・ボーイング」「欧州・エアバス」の二強体制が敷かれています。

度重なる会社同士の合併を経て集約されているのが現状です。

ボーイングとエアバス以外では短距離輸送をメインの目的としたビジネスジェットのメーカーとして「エンブラエル(カナダ)」「ボンバルディア(ブラジル)」の2社、

そして我が国日本が誇る?「三菱重工業&三菱航空機」が有名どころです。

米国・ボーイング社 〜航空機からロケットまで手がける、世界最大の航空機メーカー〜

ANAが運用する米・ボーイングの「787」

ボーイングは第二次世界大戦中の軍用機開発で成長した航空機メーカーです。

当時から民間機も製造していましたが奮わず、ライバルに押され気味なメーカーでした。

しかし、1950年代に社運をかけて投入した大型ジェット機「707」、中型機「727」、小型機「737」、超大型機「747」と矢継ぎ早のラインナップ展開が大成功。

一躍、民間機市場のリーダー企業へと成長を遂げました。

ボーイングの航空機開発には日本のメーカー企業が多く関わっている。

日本の航空機づくりの大半は「部品サプライヤー」としての立場。

日本の航空機産業とは、詰まるところ殆どが「ボーイングとの共同開発プロジェクト」であると言っても過言ではありません。

例えば、94年に就航した大型機「777」では、日本企業の共同開発比率が21%となっており、

続いて2011年に就航した後継機「787」では、日本企業の製造比率が35%にまで高まり、

更には重要部分とされる主翼の開発製造を初めて担当しました。

航空機業界への転職先の選択肢は?ボーイングに転職できる?

管理人
管理人
お察しの通り、「よし、じゃあボーイングに転職だ!」と思ってもそうはいきません。開発拠点はアメリカですからね。

 

もし航空機業界に転職したいとなると、ボーイングとの共同開発をしている日本メーカーに転職する

もしくはそれらの日本メーカー直系のグループ子会社や、細かい部品・素材単位でモノを開発製造する中小企業

はたまた下請け企業であるエンジニアリング会社メーカーが利用するエンジニア派遣会社に転職する、というのが現実的な選択肢となります。

共同開発といっても物凄い年数・人数が必要な大規模プロジェクトですから、メーカーだけではとてもこなせるものではありません。

特に2018年現在、技術者・エンジニア不足な世の中ですから、アウトソーシング比率は高まっています。

中には比較的転職で入り込みやすい業態も存在しますので、一度転職エージェント等で経歴を伝えて可能性がありそうか相談するといいと思います。

ボーイング連合

ボーイング社と日本企業の間は非常に親密な関係にあり、特に三菱重工業、川崎重工業、SUBARU(旧:富士重工業)の3社は40年以上に渡る協力関係があります。

この3社+1社はボーイングとしても重要なパートナーとして「プログラムパートナー」という立ち位置とされています。

  • 三菱重工業・・・国内首位で、「787」では主翼も生産。
  • 川崎重工業・・・国内3位、名古屋市に拠点を置き工場を新設している。
  • SUBARU・・・自動車で有名なスバル。国内4位。中央翼などを手がける。
  • 新明和工業・・・主翼前後桁

その他、各部品単位でのサプライヤとして以下のメーカーが携わっています。

  • ブリジストン・・・タイヤ(民間機用タイヤで世界シェア40%!)
  • パナソニック・アビオニクス・・・客室サービスシステム、機内娯楽装置
  • 島津製作所・・・水平安定板用のアクチュエータ
  • ジャムコ・・・ラバトリー、ギャレー、操舵室隔壁、各種ドア、内装パネル等(内装品で世界シェア50%!)
  • 住友精密工業・・・APUオイルクーラー
  • ジーエス・ユアサ・・・リチウムイオンバッテリー
  • 東レ・・・ボデー用炭素繊維素材

欧州・エアバス社 〜設立40年で巨人ボーイングと2分する存在になった航空機メーカー〜

エアバス「A380」は世界でも稀な”2階建て機体”。

エアバスは元々、欧州で企業連合を形成していた航空機関係の各メーカーが合併を繰り返して誕生した企業です。

エアバスが特に躍進したキッカケとしては、1980年代に就航したナローボディー機「A320 」が有名です。

このエアバス「A320」では最新技術とされたフライ・バイ・ワイヤやサイドスティック型操縦桿を搭載して注目を集め、

ボーイング737と市場を2分する成功を収めました。

今日特に有名な機種としては2007年に就航した、世界最大・初の総2階建てモデル「A380」でしょう。

これにより、世界中の航空会社はファーストクラスを凌ぐ「スイートクラス」や豪華ラウンジといった新サービスをスタートし、

「空飛ぶ豪華客船」の位置づけで運行しています。(日本では全日空がハワイ線に投入しています。)

エアバスと日本メーカー企業の関わりは薄い?

日本の航空機産業は古くからボーイングとの結びつきが強かったことから、技術漏洩の観点からもエアバスとの付き合いが少ないと言われています。

ここ数年は徐々にエアバスとの取引がスタートしており、日系メーカーも10社前後がプロジェクトに参画するようになりました。

エアバスとの取引企業 

  • 東レ・・・胴体・主翼用の炭素繊維素材
  • ジャムコ・・・シート
  • 多摩川精機・・・角度検出センサー、電動アクチュエータなど。
  • 横河電機・・・LCDシステム

航空機産業に技術職・エンジニアとして転職するには?

上述の通り、日本で技術職・エンジニアとして航空機産業に関わろうとした場合、

  • ボーイングの胴体・主翼といった重要部品を共同開発する、重工メーカー3社に転職する
  • 計器、センサー、内装品などを設計・製造する部品サプライヤに転職する

以上の2つが大きな選択肢となります。

しかし、どこも超大手メーカー企業です。

経験を積んだ方、技術的な知識・スキルに富んだ方であれば転職可能でしょうけど、そう簡単な話ではありません。

航空機業界でパートナー企業へ直接転職する以外の選択肢

管理人
管理人
もし上記の共同開発パートナー企業が難しそうだという場合には、以下の3つの選択肢が考えられます。
  1. 各メーカーのグループ子会社へ転職する。
  2. 各メーカーが業務請負契約をしているエンジニアリング会社へ転職する。
  3. エンジニア派遣会社の正社員エンジニアに転職し、各メーカーへの派遣エンジニアとして開発に携わる。

どれも一長一短ではありますが、転職できる可能性としては飛躍的に上がると思われます。

どんな仕事をしているのか?と言われれば各企業さんにお問い合わせくださいとなりますけれど、

大抵どこでもちゃんとした技術職・エンジニアとしての仕事をしているものです。

元・派遣エンジニアの身から言いますと、3大重工メーカーどこも数十人〜数百人という単位で派遣エンジニアを自社内に導入しています。

補助レベル〜各メーカーの社員と同等レベルまで業務内容も様々です。

強い志をもって自分の希望を発信することと同時に、適切な経験・スキルを身につけることが大事です。頑張っていきましょう。