せっかくプログラマーとして入社したのに、来る日も来る日も実機評価。C言語?自分で最後にコーディングしたのはいつのことやら。
勉強しようにもどう手をつけようと言う方。そして何より「明らかに任せてもらえる気配がない」と言うまずい状況な方。
ぜひ、少しお話しさせてください。
評価工程から上流工程に変えてもらえないプログラマーは多い
新卒として最初の業務が「実機評価(テスト)」となること自体は、普通によくあります。
最初から製品の主要部分の設計を任されることはそうそうない(というかあったらちょっと怖い)わけで。
しかしながら、新卒時代から何年間もずーっと実機評価を任されていて設計・実装(コーディング)を経験させてもらえないという不遇な方も、実は大勢いるんです。あなたはどうですか?
酷い場合だと、性能に関する仕様書は読んだことがあっても、制御仕様書やコードそのものを読んだことがないというケースもあります。
これじゃあ大学で何学んできたのか意味が分からないですね。
実機評価を丸7年もやってしまった29歳・自称プログラマーの話
私がこれまで会ってきた不遇な若手エンジニアの中でも壮絶だったのは、当時29歳の(一応)情報系学科出身・組み込みエンジニア志望のRさん。
カメラの画像認識ソフトの設計部署に配属となりましたが、丸7年ずっと認識率を高めるための実機評価→ソフト内のパラメータ調整を担当し、気づけば3名の評価メンバーを抱える評価リーダーに。
「いつかは同じ課の先輩のように設計担当者になれるに違いない。せめて、内製ツールの開発だけでも。。」
しかし時すでに遅し、彼のプログラミング能力はもうC言語の読み書きすらおぼつかないレベルになっていました。
自己学習もなくOJT頼りか!なんて思わないでください。課全体で多忙感は強く、特に任されていた評価業務のボリュームは凄まじく、毎月の残業は36協定限度ギリギリの45時間が普通で、年6回までとされる45時間超過もしっかり使い切っていたのですから。
勉強なんてしてられないですよね。と、彼のケースはキツい方ですが、恐らく日本国内で似たような人は結構いるはずです。
実機評価に縛られてしまう不運の起きる背景。
大体以下の3つが理由なように思います。他にもあるのかも知れません。
共通して言えるのは、とにかく脱出が困難ということです。
- 部署全体で業務負荷が高く、プロジェクトが終わってもすぐ次の高負荷プロジェクトに回される。つまり教える時間もなければ、成長を待つ時間もない。
- 製品特有の理由で設計工程より評価工程のボリュームが多い。評価しないといけない想定シーンがとにかく膨大。人が増やせるなら評価チームを増やす。
- そもそも教えてどうこうするつもりがない。経験者をアサインしてほしいと希望したのに、新卒きちゃったよ。正直いらないよ。うちの部署or仕事は特殊だから。
自分で努力してスキルを身につけ、アピールすることで任されるならまだいいんですけど。
特にメーカーの製品設計部署で組み込み系となると、ハード側も知ってないといけなかったり社内の独自ルールがあったりと、汎用的な知識を身につけても任せてもらえないケースがあります。
実機評価担当から脱出するにはどうしたらいいのか?
上記のケース①「指導者が教える時間がない、成長を待つ時間もない」の場合、有効なのは後輩に自分の評価業務をみっちり教え込んでしまうことです。
つまり自分だけでなく、後輩もやれる状態を作ると。
この状況かつ、(大変でしょうけど)自分自身が設計・コーディングに関してしっかり勉強していれば、多くの場合は「本当は設計にこそ人を回したい」と思っていたりするのでステップアップが叶う可能性があります。
特に上司や先輩が「本当はステップアップさせてやりたいんだけど。。」「いつも面倒な仕事ばっかでゴメンな。」みたいな罪悪感ありそうな場合は可能性アリです。(自分の人生です。迷惑にならない範囲でどんどん弱みにつけ込もう。)
ドライバ周りとなるとハード側の知識も必要となってきますが、ミドルウェア層ならばC言語のポインタや構造体レベルの知識まででも(つまり学業レベル)勉強しておくべきです。
また、書籍等でC言語そのものを学ぶのもそうですが、実践として「何かモノを作って動かす」と吸収が早かったりします。
ケース②&③の場合:正直脱出は困難かと。
上記のケース②&③においては、自分の努力できる範囲(コントロールできる範囲)ではあまり効果を為さないと私は考えます。
人事関係の部署に駆け込んで異動を願い出るというのはぜひやってほしいことですが、特に②の場合はそう簡単に手放してもらえるはずがありません。むしろ役職者としても「増員してくれ」と人事に申請しているでしょうし。
③の場合、一見努力してスキルを磨けばいいと思われますが。正当に評価する気がなかったり、努力に免じて任せてみようとはならない、権力者の謎の自負心と言いますか、傲慢さで黙殺される展開を何度か目にしています。
つまり、ここまでの場合。自分のキャリアの心配をするなら、今の状況に甘んじるんじゃなくて転職してもいいと私は思います。
ここまで酷くなる前でも全然いいと思いますけどね。十分転職の志望理由にはなると思うし。
余談:そのまま放置するとどうなるか?
実際にあったケースとして、
- 汎用性がなくなります。最悪、特定製品の評価でしか役立たないエンジニアが出来上がります。
- 多部署・他社で拾ってもらいにくくなります。(異動や転職で不利)
- 年齢面も重なって潰しが効かなくなってきます。
いや、そんなんなってどうするの?って誰も手を差し伸べてはくれません。結局、自分で努力しないと変わらないよ!とか言われることが多々です。
あとは、過去のことをチクチクと「自分でも当時やれることあったんじゃないの?」とかね。なんと無責任な、、、しかし自分の人生です。
評価に懲りて転職する前に(できれば)やって欲しいことプラスα。
もし可能であれば、Excel VBAくらいは覚えておいても損じゃないかも知れません。
評価業務だと大量のデータを効率よく処理する必要があるわけで、Excel何万行とかいう膨大なデータのの解析にはVBAが使われることが多々あると思います。
また、手作業でやっていた作業の一部を自動化するといったこともVBAで可能です。別にVBAじゃなくても良いです、VC++とかでも良いでしょう。
これからの世の中は働き方改革の影響によって、単に業務を行うだけでなく業務プロセスの無駄を省いて生産性を高めていくことが強く求められます。電通の過労死問題が表面化した17年以降、具体的な数値で残業減目標を掲げている企業も多数あります。
そういう中での転職活動では、設計・コーディング実務経験やスキルが乏しくても「改善意識を持って業務に取り組んでいる人なんだな。」と思われることが高評価となりやすいです。
社員として迎え入れるには手元の即戦力スキルより、中長期的視野での成長性ある人材が必要です。
面接で話すエピソードのネタにもなりますしね!「私はずっと設計実装工程を担当したかったけど機会に恵まれなかったので、せめてと思い担当業務の効率化のために自学自習で努力しました。」とか言えそうです。
改めてちゃんとやり直したいという場合には、メーカーやエンジニアリング系の会社よりエンジニア派遣会社が向いている。
私は派遣エンジニア出身であるため、派遣エンジニアとして働くのに向いてる・向いてないはなんとなく分かっているつもりです。
その上で「もはや明らかに知識不足で不安」「学業レベルから叩き直して欲しい」という場合にはエンジニア派遣会社の方が向いています。
何故ならば、大手エンジニア派遣会社の技術研修体制はメーカー企業よりずっと充実していることが多いからです。会社によりますが、みっちり1〜2ヶ月やり直すことが可能です。
何故エンジニア派遣会社は技術研修が充実しているのか?
ストレートに言ってしまうと、研修してからじゃないと派遣してもクレームになるからです。ただそれだけのことです。
メニューは会社によって様々ですが、例えばアルゴリズム概論〜C言語の座学的なことを学んだ後、課題に沿って実践する形で要件定義→設計→実装(コーディング)→テストとV字プロセスをなぞっていくような研修メニューが多いようです。
恐らく、モノづくりメーカー向けの分野で入社すれば、単なるC言語の知識だけでなくハード側の知識も叩き込まれることになるでしょう。
例えば最古参のメイテックを例に挙げますと、分野名自体が「マイコンシステム設計技術職」となります。名前からもお察し頂けるかと思います。