実験・評価エンジニアを辞めたい、転職したい人に向けて、その後の様々な転職先においてどのようなメリット・デメリットがあるかを見ていきます。
「実験・評価エンジニア」の仕事は、製品の性能が仕様を満たしているか、現実の事象をもって検証することです。
特にこの記事では、ユニットの強度面での耐久性・信頼性や、メカとしての性能テストを主とする「機械系の実験評価」についてを取り上げて行きます。
最近では実機を使った実験・評価は、コスト削減と開発スピードの向上を目的にCAE解析(コンピュータによるシミュレーション)に置き換えられつつあります。
それでもシミュレーションでは現実世界の条件・環境を完璧に定義して行うことは不可能であり、実験・評価というのはなくなることがない仕事です。
そんな需要の高い実験・評価エンジニアではありますが、実際には設計部門から明らかに通りそうもない実験依頼を受けたり、品質評価部門からは妥当性について説明するようみっちりお叱りを受けたりと「板挟みの苦労」を感じる工程でもあります。
そもそも自分は実際に作り出す設計フェーズがやりたかったのに、他人が作ったものを確認するばかりで面白くないという人も山ほどいます。
実験・評価エンジニアを辞めたいと感じるようになったとき、どのように捉えるべきか?またどんな行動をすべきかをお伝えしていきます。
機械系の実験・評価エンジニアを辞めたい、転職したいと考えるタイミング
1)職場環境や雇用条件に不満があり転職したい。
エンジニア職に限らず、全職種で辞めたい、転職したいと言う理由の第一位に上がるのが職場環境によるものです。
職場環境というのはつまり、「人間関係の不満」であることが多く、自分か相手のどちらかが他部署へ異動するか、転職することによって即座に解決できる不満ではあります。
また、雇用条件というのは主に給与面や有休がどの程度使えるのか、と言った点です。
エンジニア自体は転職でも売り手市場で人手不足感が強いので、
即戦力であることをPRでき、給与交渉の駆け引きでも「他に行っちゃうよ」という危機感を与えていけば転職後の給与アップも期待できます。
2)ステップアップして実験・評価についての技術力を身に着けるために転職したい。
2つ目の辞めたい、転職したい理由は、「実験・評価エンジニアとしてさらに成長したい」と言う理由によるものです。
一口に機械系の実験・評価業務といっても、任されている範囲によって大きく難易度が異なります。
例えば、
- 試作品を試験装置に組み付けて、単にデータを取るだけ。
- 製品仕様を理解した上で、試作品が仕様を満たすかどうか検証するにはどんな実験・評価をすればいいのか実験項目を考え、スケジュールや必要機材の手配も含めた計画を立てる。
以上の2通りのパターンでは、業務で必要となるレベルが大きく異なるのはお分かり頂けるかと思います。
このような中で2年も3年も業務内容が単純作業から変わっていないという場合、
別の学びがほしくなり「仕事に飽きた感」が出てきてしまうのは当然の話です。
ですが、実際の開発現場においては人手不足を主な理由として指導がされなかったり、業務の役割分担をせざるを得ず、
特に若手のエンジニアほど単調作業に固定されてしまうと言う事象が起きます。
「キャリアを積む=稼げる能力を身につけエンジニアとして必要とされるようになる」ということですので、
自分から手を上げても成長の機会が得られそうにない場合、ステップアップのための転職は間違いなくポジティブに捉えても良いです。
3)実験・評価業務自体が嫌、別工程・別分野の業務に転職したい。
何年か実験・評価エンジニアとして業務を行ううちに、
同じ機械系の中でも設計工程やCAE解析、生産技術と言った別工程に移りたいという理由で、辞めたい、転職したいと考える方も実際に多くいます。
実験・評価エンジニアは設計の下流工程に当たるため、会社によっては立場が弱く、設計担当者の言いなりになりがちです。
人は、やらされ仕事ほどつまらないものはないと考えるもので、徐々に自分の存在意義がわからなくなって来てしまうものです。
過去に私がアドバイザーとして相談を受けた実際のケースでも、設計の言いなり状態がエスカレートした結果、
「いい加減な設計の辻褄合わせをするために行うデータ取り」を毎日のように求められたことで、自分の存在意義を見失い辞めたいと考えるようになったという方もいらっしゃいます。
また、時には機械系ではなくソフト系やIT系と言った別分野に転職したいと考える方もいるでしょう。
最近は機械系よりもソフトやITの方がニュースでも日の目を見ることが多く、華やかな世界に見えてしまう、需要や将来性がありそうに思えて異分野へ転職したいと希望するパターンです。
正直需要の多さで言えば機械系も遜色ないくらいのニーズがありますが、
事実、機械系は泥臭い仕事が多いので、IT系が華やかでスマートに見えるというのはわからなくもない話です。
ただ異分野へ転身するのは「できなくない」だけで、実際にはこれまでの経験を棒に振る部分が多いです。強い志がない限りはお勧めできません。
転職先から見る!実験・評価エンジニアを辞めるメリット・デメリット
では実際のところ、機械系の実験・評価エンジニアの転職先としてはどのような選択肢があるのか、メリット・デメリットを交えながらご説明します。
1)機械系の別工程への転職
メリット
- 実験評価という工程特有の、設計からの軋轢から解放される。
- 図面の読み方や強度に関する考え方などは、設計工程・解析工程どちらでも実験評価での機械系の基礎知識や経験を活かすことができる。
- 一度設計者として経験が積めれば、実験・評価エンジニアより設計エンジニアのほうが転職市場での需要がある。
デメリット
- 転職しても実験・評価の即戦力としての働きを求められる可能性がある(工程を変更しての入社が確約されるとは限らない)
- メーカー正社員としての採用では、募集する工程の経験があるエンジニアを採用対象とすることが多く、実験・評価エンジニアでも応募できる募集を探すことに時間と労力がかかる。(派遣エンジニアでは見つかりやすい)
- 転職先への入社後、別工程での業務理解のための勉強量が多く必要。
2)機械系以外の別分野への転職
メリット
- 特に電気、組み込み分野へ転職する場合には、これまでの機械系の知識を活かした「メカトロニクス」的なキャリアプランを描くことができる。
- どの分野にせよ、理系知識やエンジニアとしての論理的な思考、工数管理、スケジューリングといったベースの考え方は活かすことができる。
デメリット
- 電気電子系や組み込み分野では大学をまるっとやり直すくらいの学習が必要。(IT系は文系でも取り付けるくらいスタートハードルが低いので除外)
- メーカー正社員、エンジニア派遣問わず、別分野への異動をOKしてくれる中途募集は非常に少ない。募集を見つけるのに多大な時間がかかる。
3)技術職・エンジニア以外の他職種への転職
メリット
- 業務内容が一気にがらっと変わるので、実験評価エンジニア特有の悩みは一気に解決する可能性がある。
- 営業やサービス系の職種でも「技術職・エンジニアを顧客とするビジネスモデル」では強い力を発揮できる。(例:メーカー営業、技術営業など)
デメリット
- 接客での会話コミュニケーションや、営業でのトーク力など、技術職・エンジニアでは必要とされなかった部分でゼロからの努力が必要。
- 働き方や考え方が大きく変わるため、経験のない業界では困惑する場面や、憧れと裏腹に想定外のストレスを受ける場面も多い。
4)実験・評価エンジニアとして他の職場へ転職する
メリット
- 職場環境や就労条件が特に大きく変わる。環境に不満がある場合、その点が解決する。
- 上司の意向で長く同じ作業ばかり任されていた場合、成長したい意欲を伝えることでステップアップにつながる業務を与えてもらえる可能性が高い。
- すぐに業務に馴染むことができる。
デメリット
- しっかりと転職先を探さなければ同じ悩みを抱える可能性がある。
- 前の職場とのルールや慣習、データの扱い方などが異なり、慣れるまでは違いに戸惑う場面がある。
現実的に、実験・評価エンジニア自体を脱却するとしたならば「機械系の別工程で転職する」というところまでが現実的なラインでしょう。
企業によって業務の担当範囲は大きく変わるもので、設計担当者自身が評価項目まで計画するというケースは珍しくありません。
この場合には実験・評価の経験を大きく活かしながらも、転職によって設計工程へのジョブチェンジを達成することができます。
また、機械系の設計トレーニング研修が充実しているエンジニア派遣会社であれば、それほど労なく意欲や人物面でのポテンシャル重視で設計エンジニアへの転身を叶えることができます。
無論言うまでもなく、転職先でも実験・評価エンジニアとして転職することが、業務内容も待遇もキャリアを積むと言う点で有利です。
今よりも条件・環境の良い職場を探す方法
特に転職が初めて〜2回目までの場合、なるべく効率よく、失敗のない転職活動を進めるためにも「転職エージェント」の活用をお薦めします。
あなたの実験・評価エンジニアとしての経験年数、評価対象として扱っていた対象物、使用できるツール類、どこまで検証していたのか?などなど、
募集をかけている企業側としても「これはマスト条件として経験していて欲しい」と言うフィルターがいくつも設けられています。
この条件は求職者が見れる「求人票」にはほぼ掲載されていません。面接になっても、面接官の口からはいちいち明らかにされないでしょう。
正直、見込みのない先にせっかく書いた履歴書を送って落とされることほど面倒なことはないです。(新卒の就活を思い出してください。履歴書何枚書きましたか?)
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ぜひ合わせてご覧ください。きっと転職活動の役に立つと思います。
是非皆さんが後悔の無いエンジニアライフを送れるよう、そして転職を達成することを願っています!