エンジニア派遣に対し「派遣は不安定だ。」という印象を持っている人は多いですよね。
多いというか、不安定と考えるのが普通だし、実際に不安定です。
でもきちんと話してみると、何故不安定なのか論理的に、かつ事実ベースで捉えている人は少ないのではないでしょうか。
新聞やテレビで「派遣切り」「一生派遣で使い捨て」と言ったの言葉を放たれれば、不安定だと思うのも無理もないでしょう。
エンジニア派遣は不安定。景気の波に左右されて大勢解約になることがある。
エンジニア派遣に限らず、派遣というビジネスは全般的に不安定だ。
2008年のリーマンショックのような不景気がきて企業の業績が悪化すると、派遣先から真っ先に経費・人件費削減の対象となって解約になる。当たり前だけど正社員のリストラより先に派遣社員が切られる。
例えば当時のニュースを振り返ると、大型トラック分野のトップメーカーである「いすゞ自動車」は、リーマンショック による業績悪化によって、2008年中に派遣従業員と期間従業員(製造)を合計1400名全員解約している。こういうことが全国各地で起こった。
私が勤務していたエンジニア派遣会社での実体験
私が勤務していたエンジニア派遣会社も同様で、
2008年初頭は社員の派遣率95%を超えていたのが、年末には派遣率60%まで減少した。つまり短期間で大勢が解約になった。
なお私の勤務先は当時で1500名以上はいる会社だったので、ざっくり500名以上が解約になった計算だ。
私も同様に4年就業した派遣先を、派遣先の業績悪化により急遽解約となった。一緒に派遣されていた同じ派遣元のメンバー、他社から派遣されてきていたメンバー合計20名が全員終了になったのだ。
これにより、3ヶ月くらいは自宅待機したが(学習期間という名目だった)実際には多くのエンジニア社員が1年以内に次の派遣先へ出ることができた。
なお、私は他のことに目移りして営業マンに転身、以降二年間は営業をしていた。社内では私一人だけだったが、こういう文章が書けるのはこの営業としての2年があったおかげだとつくづく思う。
給与・賞与も下がったが他業界よりはマシ。不安定と感じるほどじゃなかった。
給料もちょっと下がった、というか正確には2008年冬賞与と2009年夏賞与は大学生のバイト代レベルだった。
ただ、建設ゼネコン大手に務めていた私の父はリストラになりかかり、結局は基本給減&ボーナスなしという凄まじい扱いを受けていた。
あれに比べれば圧倒的にマシだなと思った記憶がある。いやーこの程度で済んでよかった。。
別に失業したわけでもなく、正社員のようなリストラにもあっていないので、特に不安定という感じはしなかった。
でもそうじゃない人も少なからずいた。
同じ派遣会社でも底辺層のエンジニアは派遣先がなく本気で不安定だったかも。
派遣エンジニアとして働く私は中堅クラスだったけど、そこまで不安定感を感じなかった。
一方、同じ社内でも底辺層のエンジニア社員はある意味不安定だよなあと感じた。
リーマンショック後の2年間くらいはそこまで潤沢に募集があるわけではなかったので、なかなか派遣先が決まらずにずーーーーっと待機状態だった。
彼らにとっては、
景気の波によって、永遠にも感じられるお勉強の毎日を送るのは不安定以外の何物でもなかっただろう。
そもそもよく入社できたなという話でもある。
そもそもエンジニア派遣は”正社員”として雇用されることが殆ど。「派遣は不安定」というイメージは”登録型派遣”のことを指している。
エンジニアの派遣を行っている会社の多くは、そもそも派遣するエンジニア社員(技術者)を「派遣元自身の正社員」として雇用している。
派遣業において正社員かそうでないかで大きく異なる点は、「派遣されているかどうかに関わらず、毎月給与が支払われる」という点だ。
派遣されていない期間中は教育を受けて技術スキルを磨くということが仕事である。
勉強をしているだけなのに給料が出るというのは不思議だと思うかもしれない。しかし、会社にとってそれは投資に当たり、より市場価値の高いエンジニアとして売り出すことができるためWin-Winなのである。
技術スキルが高い技術者=顧客(派遣先)からのニーズが高い=高い料金で派遣でき利益が上がるということなので、派遣会社側としてはドンドン勉強してより稼いできてくれる技術者になってほしいと考えているわけだ。
登録型派遣は解約になったらそこでおしまい。
一方の登録型派遣というのは「派遣会社に”登録”して、派遣契約で仕事に出ている社員」のことを指している。
登録型派遣では、派遣会社と社員の関係は社員契約でもなんでもない、登録されているだけだ。
なので投資だの教育だのというのは殆ど考えないし、派遣先での派遣契約が終わったらサヨナラということになる。
その後は当然給料は出ない。つまり無職である。
この手の派遣は不景気で解約になると、どこもかしこも不景気だから仕事がなく収入源がなくなってしまう。
また、多くの場合このような派遣というのは仕事内容がごく簡単な作業チックな内容に絞られている。例えばオフィス内での事務スタッフとして簡単なExel入力や資料作成をする、はたまた物流倉庫での軽作業スタッフ、ライブ会場での誘導スタッフ、物販スタッフ等。
なので非正社員の登録型派遣は給与が安く、ステップアップやキャリア形成に繋がりにくいといえる。
これが世の中で言われる「派遣は不安定」の大きなポイントだ。
今回のまとめ
残念なことに世間では派遣における二つの雇用パターンが混同されてしまいがちだ。
正社員型のエンジニア派遣は腰を据えて働くことができキャリア形成にも繋がるため、過度な恐れは不要かと思う。
加えて、世間でのエンジニアのニーズは非常に高いのが今の世の中。
メーカー社員としての入社は難しいとしても、エンジニア派遣会社で教育を受け経験を積めば社会からのニーズに応えることは可能。派遣先では社員同様の扱いをされることが多く、エンジニアとして素晴らしい成長につながるケースが多々ある。
(なお、しっかり経験を積んだエンジニアは次のステップとして大手メーカーの正社員に転職していく傾向がある。一方で「一つの業界・企業に留まるのは飽きるから。」と言ってエンジニア派遣を続ける人もいる。)
イメージというのは簡単には払拭しにくいもの。自分が働く上で何を恐れているのか、反対にどうなることを望んでいて、それは叶いそうなのか。自分の内側と向き合って腹落ちさせていくことが何より肝心だと私は考える。
そもそも、自分自身がどれだけ世間のこと、そして世間にあふれる仕事のことを知っているかを振り返れば、「そんな気がする」というイメージ先行で判断することはいい結果に繋がらない、ということも理解できるのではないだろうか。